最もあっち側に近づいた日

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何か危ないことや無茶なことで命を削り、
それをやり遂げた達成感を糧に大人へと成長していく。

誰しも若い時は程度の差こそあれ、
必ず通ってきた道ですよね。

学生時代信州の山奥で破天荒に生きていた僕も、
毎日が見えない何かへの挑戦だらけでした。

そんな僕が、いや僕たちが最も行ってはいけないあっち側へと近づいた日。
それは風一つないとてもとても穏やかな春の日のことです。

当時僕の中で大流行りだったのが1980円で売っているゴムボート。
これが意外にも丈夫で、
無理やり3人で乗って天竜川を下ったり、
諏訪湖を横断したりしていたのものでした。

少し時間の空いたある午後。
後輩2人を誘い、
少し変わったランチをしよう!と提案しました。

それは田んぼの横を流れる用水路にボートを浮かべて、
その上でのんびりお弁当を食べようというもの。

早速3人で弁当を買い込み、
ゆっくりとボートに乗りながら用水路を流れ始めたのです。

ここで少し用水路について説明すると、
まず1m程のフェンスを乗り越えて川に入ります。
その用水路の両壁は意外に高くて手を伸ばしても届きません。
また用水路自体流れは穏やかなのですがかなり深いのです。

まずは上からボートを投げ入れて、
上から順番に飛び降りてから、
今回の冒険が始まったわけです。

3人でお弁当を食べながらまずある事実を全員で確認します。
今の状態では自力で上に上がるのは不可能だという事。
しかしあまりにもゆっくりと流れる川と、
春の陽気がその真実をキレイに覆い隠してくれました。

まぁなんとかなるだろう・・・。

そのままのんびりとボートは流れ続け、
20分ほど平和な時間を過ごした時、
突然それは飛び込んできたのです。
ありえない風景が。

50m程先なのですが、
急に用水路が行き止まりになっているのが見えたのです。
ちょうどその先には大きく深い崖があるのでここで用水路は終わり。
なんとそこからは水は地下に吸いこまれていき、
対岸の崖の上からまた始まるという仕組みになっていたのです。

その行き止まり部分では地下に吸い込まれる水が轟轟と音をたてて渦巻いていました。
まるで僕たちを手招くように。

さすがに事の重大さに気づいた僕たち。
あれはやばいんじゃないか?
逃げられないんじゃないか?
なるべく冷静に解決法を必死に見出そうとするも、
どんどんとその終焉へと進むボート。

その時その渦巻く横の壁に上に登れるハシゴを発見!
あれだっ!
やはり救いの神は見捨てていなかった。
あそこから脱出しよう!

なんとか希望を見出した3人は慎重にオールを構えてその時を待ちます。
ハシゴが近づいた瞬間に一気にボートを寄せて脱するしかない。

なにせ失敗は死を意味します。
極限まで高まる緊張感。

そしてだんだんとハシゴが近づいてきました。
3m・・・。
2m・・・。
それ今だっ!!

全力でオールをこぎ始めたその瞬間!
荒れ狂う水面は枯葉のようにボートを軽く持ち上げ、
一緒にして3人を空中へと放りだしたのです。

バッチャーン!

一瞬パニックになるも、
無我夢中でもがく僕の手が奇跡的につかんだのがハシゴでした。
よっしゃ!!
そして慌てて振り返ると、
そこにはいるはずの後輩の姿がどこにもない・・・。

全身の血が一気に引いていくのが分かりました。
聞こえるのは激しく打つ鼓動の音。
やっばい・・・・。

しかしこのマス。
水を引き込む勢いがすご過ぎて、
その周辺ではたくさんの渦の流れがあるのです。
一度数m下まで巻き込まれた2人が、
別の流れにのってなんと今一度浮上してきたのです。

ここだーーーっ!!
命懸けで一人を掴み引き寄せます。
ただし使える手は1本のみ。

目の前で後輩が再び水中へと消えていったのです。
マジか・・・。
頼む・・・!


胸を締めつめられる程の祈りの中、
永遠にも感じられる数秒を経て、
もう一回下から後輩が浮かんできたっ!
絶対に逃さん!!
渾身の力で捕まえて引き上げる。

激しく咳き込みながらも2人ともなんとかハシゴを掴み、
そして無事に地上に戻ってこれました。

力が抜けきりうずくまるような状態の3人の口から出てきたのは、
天に届くような咆哮。
嬉しいのかどうかもうよく分からないのですが、
ほんとに自然に叫んでました。

2回水中の死の果てを覗いた後輩は、
相当怖かったのか大号泣してましたけどね。

結局3人とも履いていた靴は全て吸い込まれ、
後輩は2人とも眼鏡も吸い込まれてました。

生きているって素晴らしい。
嬉しいことや楽しいことを求めて人は生きてるのですが、
ただ生きてるっていうことだけでもこんなにも素晴らしい。

僕の人生の中でかなりあちら側の世界に近づいた瞬間。
それでも生き延びれたのは、
きっと何かの力が導いてくれたのでしょう。

僕にとって彼ら2人はともに死地をくぐり抜けたかけがえのない存在です。
恋愛にも似た特別な友情を感じているのですが、
でもいつの時代も恋は一方通行。

「先輩の誘いは今後絶対に受けません!」

声をそろえて言われてしまいました。
そりゃそうか。

いやー、えらく長くなっちゃっていましたね。
すみません。

湯布院カントリーロードユースホステル  
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